あるとき、お茶の亀屋の御主人のお使いで、京の都にお茶壷を急いで運ぶことになったんや。
お茶壷一つでは、万が一にも粗相があったらいかんのう ゆうて、兎と亀の二手に分けて運んで貰うことにしたんや。
兎と亀はお茶壷を背負って、めいめい勇んで出発したんや。
ちょっとでも早ようゆかないかんゆうて、兎は瀬戸内海を、まずは舟を借りて帆に満風をうけ、悠々と渡っていったんや。
亀は海の波にもまれながらも、なんとか備前の陸に上がることができたんや。
京の都への陸路はほんまに不便で、とても走りにくかったんや。
兎は重い茶壷を背負いながらも、持ち前の早足でどんどん先に駆けていったんや。
ほやけど亀は両手両足をのろのろと動かしながらも、一路京の都に向かって進んでいったんや。
兎は亀の様子を伺いうかがい、自分の足に自信があるんで時折一服する程の余裕をみせておったんや。
亀は京の都に向かって、ただひたすらお茶壷を無事運ぶことだけを念頭に走り続けておったんや。
兎は途中小高い丘で、またひと休みと寝っころがったんや。
ところがやのお、兎はちょっと疲れたんと、ぬくうい日差しのとこでとてもええ心地になっての、すっかり眠りこんでしもうたんや。
そやけん、お茶の亀屋では亀が家宝として代々大事に敬われてきたんやと。
おしまい。
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